漬け物

漬け物は保存食の白眉

 

奈良時代には「須々保利」と呼ばれる野菜の漬け物が存在していましたが、室町時代あたりから「香の物」とも呼ばれ、江戸時代以降の食生活には欠かせぬ存在となりました。

 

野菜の漬け物に限っても、材料、添加物、重しの軽重、発酵の有無などによって多種多彩となり、江戸時代前期には、すでに塩漬・砂糖漬・南蛮漬・浅漬・一夜漬・粕漬・あま漬・あちゃら漬などがありました。

 

もっとも馴染み深い漬け物に「沢庵漬」がありますが、生干しした大根を塩と糠で漬けたもので、命名の由来は江戸時代の禅僧・沢庵和尚の考案によるとか、「たくわえ漬」が訛ったなどの説があります。

 

当時、漬け物は各家々で製されるものでしたが、頻繁に火災が起こった江戸では空き地は防火地とされたため、漬物桶を置く余地がありませんでした。

 

そこで、大根の名産地、練馬村の農家に沢庵漬の製造を依頼し、必要に応じて農家から届けさせて食していたのでした。

 

沢庵漬のほかにも大根の漬け物として、「いぶりがっこ」、「べったら漬け」、「壷漬け」などがあります。

 

「いぶりがっこ」は秋田県内陸南部に伝わる大根を燻製にした後、米糠で漬け込んだもの、「べったら漬け」は皮を厚めに剥いた大根を塩押し、その後、砂糖・米・米麹で本漬けした東京産の漬け物です。

 

その起源は江戸時代に遡り、日本橋の宝田恵比寿神社・えびす講の前夜(10月19日)、神社を中心とした日本橋、大伝馬町、留町、人形町近辺の通りで「べったら市」が開かれ、べったら漬が売り山されたと伝えられています。

 

「壷漬け」は杵でついた干し大根を壷で塩漬けにしてから、調味醤油で味付けした鹿児島特産の漬け物です。

 

さて、京都では「柴漬け」、「千枚漬け」、「すぐき」などがあり、京都三大漬物と称されています。

 

まず、柴漬けは茄子や胡瓜を刻み、赤紫蘇の葉を加え、塩漬けにした酸味の強い漬物です。

 

その名は、平家滅亡後、出家して大原・寂光院に隠棲した建礼門院徳子(高倉天皇の中宮で、安徳大皇の母。平清盛の娘。1155〜1213年)が、里人の差し入れた漬物が気に入り、名付けたという伝承があります。

 

「千枚漬け」は聖護院蕪を薄く切った漬物で、天保年間(1830〜1844年)を起源としています。

 

当時の千枚図漬は紫蘇の葉を何枚も重ねて塩漬けか、昧噌潰けにしたものだったようです。

 

慶応元年(1865年)からは、薄く切った生護院蕪を塩漬けにして、しんなりさせたのち、昆布や唐辛子を加えて味淋をふりかけて漬けたものに変化し、今日までこの製法で造られています。

 

「すぐき」は酸茎菜(すぐきな)を塩水で一晩下漬けしたのち、塩をまぶして約一週間本漬け、その後、室の中で約8日間発酵をさせたものです。

 

完成品は葉も茎も鼈甲色飴色に近くなり、かぶらは黄色がかった乳白色を呈しています。

ぬか漬け

 

日本列島はどこへ行っても「カビ産す国」であるということができます。

 

湿度が高く、比較的温暖だからいろんな菌が発生しやすいのです。

 

人間にとって役に立つ、いい菌もあれば、悪い菌もあります。

 

日本人は古くから天然発生の菌をさまざまな手段でコントロールし、役に立つ菌だけを手なずけて、多彩な発酵食品を作ってきました。

 

味噌、納豆、醤油、酒、なれ鮨、そして漬物などです。

 

毎日の食事ごとに納豆をネバネバとかき混ぜ、刺身を醤油で食べ、味噌汁を「ああ、おいしい、日本人に生まれて何て幸せなんだろう」とすすり、コリコリとか、パリパリと漬物の食感と香りを楽しんできたのです。

 

漬物を「香々」とか「お新香」などと愛情をこめて呼ぶのも、香りのよさを賛美したものです。

 

漬物は甘くてちょっと酸っぱい香りで日本人の心を捉えてきたのです。

 

タクアンにはタクアンの香りがあります。ぬか漬けにももちろん、米ぬかのほわっとした廿い香りがあるのです。

 

米ぬかは玄米をとう精して白米にする時の副産物で、種皮などぬか質の粉で貴重な胚芽なども含まれています。

 

米ぬかにはビタミンB1やB2、葉酸、ビタミンEなどに加えて、カリウムやカルシウム、鉄分、亜鉛などのミネラル、脂質、たんぱく質、食物繊維などが豊富に含まれています。

 

最近注目されているのが米ぬか中のフェラル酸です。ビタミンEを上回る抗酸化力があることが判明したのです。とくに、脳細胞の酸化を防ぐ上で効果が期待されています。

 

この栄養のかたまりのような米ぬかを漬け床にして発酵させたのがぬか漬けだから、その中に漬けた材料にも、さまざまな種類の栄養かしみ込んでいます。

 

栄養だけでなく、生きた有用菌もしっかりと繁殖しているのです。

 

独特の風味は米ぬかの香りや酵母、乳酸菌、酵素などの働きによって生まれるもので、これらの菌類は消化をよくしたり整腸効果を高めてくれるのです。

 

しかも、ぬか漬けは浅漬けだから、塩分の心配もそれはどない点でも優れています。

 

とくに、ぬか漬けは「米ぬかで作ったヨーグルト」とも言われるほど乳酸菌が豊富です。

 

キュウリやナス、カブ、人参などの野菜を漬けると、それらの細胞内から成分がしみ出てきて、乳酸菌の栄養となり猛烈に繁殖を始めるのです。

 

したがって、ぬか漬けを食べるということは、米ぬかのビタミン類に加えて、乳酸菌などの生菌を回収して腸まで送り込むことを意味します。

 

植物性の乳酸度の方が環境の変化に強く、動物性の菌よりも腸まで届きやすいのです。
有害菌をおさえて善玉肉を増やすだけではなく、免疫力を高める上でも効果的なのです。

 

体内に侵入してきた悪い菌を撃退するために、日夜目を光らせているのがです。

 

なにしろ、免疫細胞の60%が腸に集結していて、腸は体を守る前線基地であり、免疫細胞の重要基地のようなものなのです。

 

免疫力というのは病気を防いだり、治したりする自然治癒力のことです。

 

ぬか漬けに多い乳酸菌などは、そのような力を強くするための腸内環境をととのえたり、改善する素晴らしいパワーを持っています。

 

米ぬか由来の乳酸菌は日本人の腸になじみやすく、腸の健康への働きかけも強い言われています。

 

和食文化が生んだぬか漬けは世界屈指の「健康長寿漬け」ともいえるのです。


 

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