刺身の話

刺身のルーツは膾(なます)

 

魚貝類を生のまま食べるためには、素材の「新鮮さ」が要求されます。

 

古代の日本では、
「羮に懲りて膾を吹く」という中国の故事((楚舒)にありますように、紀元前から存在する「膾」という料理法を用いて食していました。

 

それは、鳥獣魚貝の肉を細かく切り刻んで生食する中国伝来の料理法で、「類聚雑要抄」にも記されているように、鶴・鴨・鯉・鮒・鯛・鱒・鮭・鮑(鯉とも書きます)などを膾にして、王朝人の□を楽しませていました。

 

彼らは、酢や酒・塩・醤など、好みの調味料をつけて食しました。

 

さて、室町時代に入りますと「膾」という科理法は、「酢で和えた和え物」に変化を遂げます。

 

当時は謄に使用する酢は蓼酢(青蓼の葉をすり鉢ですって、酢でのばしたもの)が多く、蓼が出回る春から秋にかけての季節は、総じてどんな魚でも蓼酢を用いて和えるのが最良とされていました。

 

さらに、江戸時代になりますと、鮒鮪を糸作りやそぎ作りにして、その魚卵で和えたものを山吹の花にたとえて「山吹膾」といい、また柳の葉を筏のように並べた上に、鮎の細く切ったのを盛ったものを「筏膾」と呼んだりと、見た目の色合いや、盛りつけ方などから命名した種々の膾が誕生しました。

 

現在では、細切りにした大根と人参を甘酢で和えた「紅白膾」(平家と源氏の旗に見立てて「源平膾」ともいいます)がよく知られでいますように、魚貝や野菜を合わせ酢で和えたものを広く「膾」と称しています。

 

ちなみに、合わせ酢の基本は二杯酢(酢一、醤油一の割合)、三杯酢(酢一、醤油一、味醂一の割合)、甘酢(酢八、砂糖四、塩一の割合)です。

刺身は和食の花形

 

膾に対して、室町時代中期から魚介類を生食する新しい調理法として、膾よりも厚く切った「刺身」が登場し、和食を特徴づけるものに発展しました。

 

その頃の刺身は、鯉には山葵酢、鯛には生姜酢、鱸は蓼酢、フカとエイは実芥子酢、カレイはぬた酢、クラゲはクルミ酢が適していると言われ、おおむね、を用いて食べられていました。

 

今日のように山葵(わさび)醤油で食するようになるのは、醤油の使用が一般化した江戸中期以降と考えられます。

 

江戸時代に入り、定置網の開発によって漁獲量も増加し、
鯛・鮭・真魚鰹・烏賊・鯨・鯖・鮫・鯖・鮟鱇・カワハギ・飛魚・自魚・鰤・鰆・ハマチ・鮪などの海魚、鮒・鮎・鱒・鰻などの川魚なども剥身にして食べられるようになりました。

 

「京坂の作り身」「江戸の差身」

刺身の話

 

関西では刺身のことを「つくり」といいますが、『守貞漫稿』には

 

「京坂の作り身」「江戸の差身」と題して屋皿に盛った刺身の挿し絵が載せられています。

 

江戸と京坂では盛りつけ方が異なり、「江戸では切り身を綺麗に整列させて盛りつける」と強調しています。

 

さらに、素材について京坂では
「四季を通じてもっぱら鯛を用い、鮪は下魚であるので刺身にはしない」とあります。

 

一方、江戸では「祝い事には鯛の刺身を供するが、日常的には鮪で、冬季は鮃を用い、紅白二種を合わせ盛るのを「作り合わせ」という」とあります。

 

江戸の刺身には、糸切大根・糸切独活・生紫海苔・防風(セリ科の多年草)姫蓼などを三種か、四種添えるとも述べています。

 

とくに必要でないものをたとえて「刺身のつま」などといいますが、千切り大根は「けん」であって「つま」ではありません。

 

「けん」は「つま」の範疇に入りますが、厳密には山葵などを「つま」といいます。

 

山葵は抗菌作用があり、鮮魚を新鮮に保つ役割を担っていますので、刺身には欠くべからざるものといえます。

 

 

刺身は魚肉の特性に応じた切り方がされますが、もっとも基本的なものは「平作り」と呼ばれるものです。

 

包丁を魚の身に対して垂直に肖てて、包丁の切れを活用して切り離しますので、誰にでもできる方法です。

 

このほか包丁を少し寝かせて切る「そぎ切り」や透けてみえるほど薄くりる「薄造り」、糸のように細く切る「糸造り」などは「平作り」に比べると技術を要するといいます。

 

たとえば、フグの薄造りは色絵磁器の川を用いて盛りつけることが多いようですが白身の魚肉の下に皿の絵柄が浮かび上がり、目にもおいしい工夫がなされるのです。 


「洗い」「湯引き」「たたき」

さらに、手を加えたものに「洗い」「湯引き」「たたき」などがあります。

 

「洗い」はさっと湯にくぐらせて冷水できます技法で、鯉などの匂いの強い魚に用いられます。

 

「湯引き」は鱧や鮪・鰹などの比較的身の柔らかい魚に行われ、さっと熱湯を通して身をうしめるものです。

 

関西では鱧(はも)の湯引きのことを「鱧のおとし」といい、梅肉や昨味噌でサッパリといただきます。

 

とくに、京都では盆地独特の蒸し唇さに対処するため、長いものを食べると精がつくと考えられ、鰻同様、鱧は夏の味覚の代表として珍重されています。

 

真夏の京都を彩る祇園祭のあいだ(7月1日〜31日まで)の食材は、鱧に終始することから『鱧まつり』とも呼ばれているほどです。

 

鱧は長く使い骨がありますが、専用の包丁で行う「骨切り」という下処理は、京都の料理人の腕の見せ所で、夏の京料理には欠かせない食材となっています。

 

「たたき」の調理には三種あり、一つは葱・生姜・大葉・ニンニクなどの香草といっしょにサイコロ大の生の魚肉(鮪・鰹・鯵など)を文字通り、たたくように細かく切り刻んだものです。

 

二つ目は味噌を混ぜて粘りが出るまでよく刻んだもので、なめるほどおいしかったことから「なめろう」と命名されたとの説もあります。

 

なめろうは千葉県の郷土料理で、漁師が漁船の上で作ったことから「沖膾」とも呼ばれます。

 

三つ目は高知県を本場とする「鰹のたたき」です。

 

ブロック状の魚肉の表白だけを軽く炙ったのち、一口大に切り分け、葱・生姜・ニンニク・大根おろしなどの薬味を加えた醤油やポン酢をつけて食べるものです。


 

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