魚の話

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魚の話

 

魚貝類は、漁獲時期が数ヶ月ありますが、市場に出始めたものを「走り」、最も多く出回っている時季を「旬」、終盤を「名残」と呼んでいます。

 

たとえば、鰹の走りは「初鰹」といって、江戸時代からもてはやされました。

 

鰹は初夏になると黒潮に乗って南方から日本近海にやって来る回遊魚で、江戸っ子たちにはこの時季、この走りの初鰹を「どてら、質に置いても初鰹」と意気がるほど賞翫しました。

 

『守貞澄稿』には「江戸初鰹売」の図が掲載され、まことしやかに『走りを食うと、寿命が75日延びる』とまでいわしめるほどでした。
とくに、初鰹は特別で、10倍の750日も長生きできるとされたのでした。

 

江戸時代の鰹は鎌倉あたりの漁場でとれたようで、松尾芭蕉(1644〜1694年)は
「鎌倉を生きて出けむ初鰹」と詠んでいます。

 

また、山口素堂(1642〜1716年)は、あの有名な
「目に青葉山ほととぎすはつ松魚(かつお)」
と詠みました。

 

ちなみに、この二句が物語っているように、鰹の生食は江戸時代中期以降のことで、それより前は、武家は食さない下魚(下等な魚)とされ、見向きもされなかったというのです。

 

夏が旬の鰻は、「土用の丑の日」に食べる習慣があります。

 

夏の土用の丑の日は7月19日から8月7日の間にあり、最も暑い時季に栄養価の高い鰻を食べて乗り切るという生活の知恵から生まれた習慣のようですが、安永・天明の頃(1772〜1788年)に始まったといわれています。

 

通説では、異才平賀源内(1728〜1780年)の発案ともいわれています。

 

それは、夏場の売り上げ不振に苦慮した贔屓の鰻屋が、源内に打開策を相談したところ、
「本日土用丑の日」という看板を出し、身体に良いと宣伝するようにいわれたというのです。

 

源内の言う通りにしてみると、あれほど売れなかった鰻が売れに売れたというので、他の鰻屋も遅れをとってはいけないと、「本日土用丑の日」の広告を掲げるようになりました。

 

こうして、「土用丑の日」に鰻を食べる慣わしが定着したと伝えられています。

 

さらに、一説によれば、土用の丑の日に「う」の字のつく食べ物を食べると夏バテしないという風習があって、鰻のほか、瓜・梅干・うどんなどが食べられたといわれています。

 

鰻は開いて醤油と洒で調味して焼く「蒲焼き」にしますが、丸焼きの姿が蒲の穂に似ていることから蒲焼き、あるいは、焼き色が樺色(赤味を帝ぴた黄色)であることから樺焼きと称したなど、諸説があります。

 

鰻の割き方に関東と関西では差異があり、「江戸の背割り 京坂の腹開き」といって、江戸では腹開きは切腹に通じることを忌んで背割りとされたといいます。

 

さらに、関東では白焼きのあとに、蒸す工程が加えられているごとも大きな特徴です。


いろんな食べ方

 

鰻は日本以外でも近隣の中国や台湾をはじめ、ヨーロッパでもフランス・ベルギー・ドイツ・デンマークなど多くの国々で食されています。

 

しかし、日本のように割いてではなく、ぶつ切りや輪切りにされているほか、燃製にしたり、薬味として用いるなど、食べ力もさまざまです。

 

とくに、中国福建省福州では「注油鰻魚」という料理があり、輪切りにした鰻をカレー粉や料理酒に漬けて下味を漬けた後、片栗粉をつけて油で揚げ、そののち、ラードに漬け込むというものです。

 

ベルギーやフランスでは煮込み料理、ドイツやデンマークでは燻製にして、パンにトッピングしたり、はさんだりして食べるそうです。

 

醤油味になれている日本人には、異質な味に感じられます。

 

さて、川魚の王様・鮎は、6月から9月にかけて漁獲されますが、海に近い河口で誕生し、稚魚の間は海で暮らしています。

 

春には川の上流に向かって上り、成長し、お盆すぎ頃になると産卵のために再び、下流に下って行くのですが、これを「落ち鮎」といいます。

 

まさに「名残」の味覚で、正岡子規も「落鮎の身まかせたる流れかな」と詠み、秋の季語ともなっています。

 

秋の代表格は、何といっても秋刀魚をおいて他にないでしょう。

 

この漢字が使われたのは大正時代あたりからで、大正10年(1921年)に佐藤春夫が発表した「秋刀魚の歌」の詩から、この表記が広く知られるようになりました。

 

秋刀魚は塩焼きにするのが一般的ですが、丸ごと一本酢で締めて押ずしにした「秋刀魚ずし」は三重県志摩地方から和歌山県にいたる熊野灘一帯で、祝い事に食されています。

 

江戸時代において秋刀魚は庶民の手が届く大衆魚で、「目黒の秋刀魚」という落語にもなっていることは、ご存じの方も多いのではないでしょうか。


 

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