大豆発酵調味料,米発酵調味料

出汁の旨味を引き立てる醤油のルーツ

 

昆布や鰹の出汁としても相性が良いのが大豆発酵調味料である醤油や味噌、そして、酒をはじめとする味醂・酢などの米発酵調味料です。

 

海の幸・昆布や鰹と、山の幸・大豆や米の発酵調味料とのベスト・マッチングなのです。

 

 

鰹や昆布の出汁をさらにおいしくする醤油の原形は「醤」(ひしお)と呼ばれ、古代中国に伝わる「醤」が日本に伝来したものであるといわれています。

 

つまり、和食独自の調味料とも考えられている醤油は、中国からやって来たのです。

 

中国の「醤」は果実・疏莱・海草・鳥獣魚貝類などから作られましたが、汁気が少ないものが高級品であるといわれ、今日の醤油のような液状のものは粗悪品とされました。

 

一方、日本の醤は、米・小麦・大豆などの類を発酵させた「穀醤」と考えられ、奈良時代には国内で生産が開始されました。

 

醤油と味噌の中間のようなとろみがあり、相当、塩味が強かったようです。

 

古代の人々は、この穀醤をつけて野菜や魚を食べていました。

 

『倭名類聚抄』には、大豆だけで作られた豆醤の記述もみられます。

 

さて、この穀醤がのちに醤油と味噌に発展したといわれていますが、明確に区別できるものではなかったようです。

 

建長6年(1254年)、中国・宋より帰国した禅僧とか心地覚心(1207〜1298年))は径山寺味噌を持ち帰り、その技法を紀州湯浅の村人に伝授した過程で発見された沈殿液は、今日の溜醤油のようなものであったといわれています。

ヨーロッパ人が醤油のとりこになる

 

日本国内に醤油が流通するようになった正保四年(1647年)、オランダ東インド会社によって醤油は台湾商館に送られ、ヨーロッパ諸国に「極東の調味料」として伝播しました。

 

醤油については、17世紀初頭に刊行されたオランダ語の辞書『日葡辞書』に、

TamariMiso(味噌)から取る。
非常においしい液体で、食物の調理にもちいられるもの

と説明されているほど、海外からの注目を集めていました。

 

国内生産は決して多いとはいえない状況のなか、10樽(約300リットル)が台湾やバタビア(ジャカルタ)、カンボジアなどを経由してオランダ本国に運ばれ、彼らの味覚を堪能させたようです。

 

たとえば、安永四年(1775年)から約1年間、オランダの長崎商館付きの医師として日本に滞在したスウェーデン人カール・ツンベルク(1743〜1828年)の著書『ツンベルク日本紀行』に、

(日本人は)非常に上質な醤油をつくる。これはシナ(中国)の醤油に比して遥かに上質である。多量の醤油樽がバタビア、印度、及び欧羅巴に運ばれる。

と記され、フランス人ドゥーニ・ディドロ(1713〜1784年)とジャン・ル・ロン・ダランベール(1717〜1783年)らがへ編纂した『百科全書』(1751年から刊行)にも、

日本人が調理に使用し、アジア人に人気の高いソースの一種である。オランダ人もまたこ
のソースを高く評価し、自国に持ち帰った。……中国人もSOI(ソイ=醤油)を製造
するが、日本のものの方がより優れているとみなされている。

と、極東の調味科ソイ・ソースはかなり高い評価を得ていたのです。

 

また、モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥールが柚いたルイ15世の愛妾ポンパドゥール婦人の肖像画の中で、彼女が手にしている書物は『百科全書』であるといわれていることから、18世紀半ばのフランスにおいても醤油の存在は知られていたと推測されます。

 

長崎から輸出された醤油の多くは樽詰めにされましたが、四角いガラス製のブランデーやリキュール、蒸留水を入れた「ケルデル瓶」を再利用し、それに詰めで世界各地のオランダ商館に送られました。

 

その後、「ケルデル瓶」に替わって寛政2年(1790年)に登場したのが、長崎の伊万里や波佐見で焼かれた徳利型磁器「コンプラ瓶」(コンプラの語源は買い手を意味するポルトガル「Comprador」)です。

 

さて、醤油は日本から長い船旅を経てオランダに到着するわけですが、品質を損なうことなく運ぶための工夫が必要となりました。「ツンペルク日本紀行」によれば、

和蘭人(オランダ人)は醤油に暑気の影響を受けず、又その醗酵を防ぐ確かな方法を発見した。

 

和蘭人はこれを鉄の釜で煮沸して瓶詰めとし、その栓に瀝青を塗ったのである。このようにすれば醤油はよくその力を保ち、あらゆるソースに交ぜることができる。

 

とあって、醤油を煮沸して瓶詰めにし、栓がゆるまないように、栓の上に瀝青青、つまりコールタールを塗って完全密閉しました。

 

このような工夫によって、美味しい極東の調味料・醤油がヨーロッパに伝えられたのです。


 

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