鰹節と鰹出汁

鰹節と鰹出汁のエピソード

 

古代、「堅魚(生鰹を縦割りにし乾燥させたもの)」をはじめ、「煮堅魚(煮た鰹を乾燥させたもの)」や鰹の煎汁である「鰹魚煎汁(鰹節または大豆を煎じた煮出し汁で、塩と並ぶ重要な調味料)」は租税として納められ、昆布同様、神饌とされました。

 

鰹出汁が料理に用いられるようになったのは13世紀末期のことといわれ、昆布に先んじて出汁をひくために使用されていたようです。

 

さて、今日のような鰹節となるのは室町後期のことで、鰹を煮たのちに乾燥し、さらに「燻す」工程を加えた燻乾法が完成したことによります。

 

これによって、鰹は長期保存が可能な鰹節へと変身を遂げたのです。

 

鰹節の初見は慶長・寛永年間(1596〜1647年)頃といわれ、江戸初期においては、単に「カツオ」と呼ばれ、後に、江戸では「カツブシ」あるいは「オカカ」といい、京坂では「フシ」と称するようになりました。

 

さて、上方落語「寄合酒」には、鰹節と鰹出汁がおもしろおかしく語られています。

 

宵越しの金を持たない町内の若衆が暑気払いに酒宴を思いつきましたが、何しろ持ち合わせの金がないものですから、めいめい肴を持ち寄ることになったのです。

 

鰹節を手に入れようと、乾物屋の子供に鬼ごっこをして遊ばうと提案し、鬼の角は鰹節で代用するからといって商品の鰹節を持ってこさせます。

 

鬼になった若衆は、その子供をさんざん怖がらせて、ついには鰹節をせしめてしまうのです。

 

さて問題はここからです。

 

鰹節を手に入れたところまでは良かったのですが、料理に不慣れな若衆たちは、その鰹節を全部、一度に削って、大きな鍋いっぱいの鰹出汁をひいたのです。

 

出汁を担当した若衆は、鰹の出し殻の方を使うものとばかり思っていたため、本来、必要な出汁で行水をするやら、フンドシを洗うやら大混乱をきたしてしまったという顛末です。

 

この落語が言わんとすることは、鰹節はカンナの付いた木製の削り箱で使う分だけを削り、その削りたてがおいしいとされていることです。

 

ですから、削った鰹はすべて使って、大量の出汁をひくことになったのでしょう。

 

この落語の原本は笑話本『醒睡笑』で、寛永五年(1628)に書かれたといわれていますから、この頃、すでに鰹出汁が庶民の問でも流布していたことが推測されます。

 

同時期の料理本に「削り鰹一升に水一升五合の割合で出汁をとるのが適量」で、煮すぎても良くない、二番出汁も使用すべきとも記されています。

 

さて、科学的には、大正12年(1923年)小玉新太郎によって鰹節からイノシン酸ナトリウムが抽出され、それが旨味成分であることが確認されました。

 

もっともお勧めの出汁は、昆布と鰹節を合わせ用いることです。

 

つまり、グルタミン酸とイノシン酸の相乗効果で、芳醇な香りと上品な旨みのある出汁がひけるからです。

 

今日、「一番出汁」は、吸い物や、うどん・蕎麦の出汁に用いられ、湯出しで昆布出汁をとったあと、削った鰹節呼節を加え、沸騰したら直ちに火を止めてアクをとり、漉して使用します。

 

一番出汁の出し殻を再利用したものは「二番出汁」と呼ばれ、一番出汁をひいた後の昆布と鰹節に再び水を加えてひいたもので、途中で「追い鰹jといって鰹を加えることもあります。

 

味噌汁や煮物など、味噌や醤油などの調味料を加える料理に用いられます。

 

ちなみに、和食では鰹節や昆布のほか、イノシン酸と同じ成分を含有する煮干し煮、イノシン酸と似た構造を持っているグアニル酸を含む椎茸などからも出汁をひきます。

カツオ節と日本人

鰹節と鰹出汁

 

世界一固い食べ物が日本にはあります。

 

それは固いけれども味は極めて良いのです。

 

削って食べてもらうと、外国人はまるでビーフジャーキーの味だと言って目を丸くします。

 

和食のダシ、カツオ節は、古代から保存食となり、酒の肴、飯の莱、そしてダシの材料になってきました。

 

凝り性の日本人はもっと美味な味が出るはずだと手を加え、技術を開発し、ついにここまで固くしてしまったのです。

 

よく仕上がったカツオ節を両手に取って叩くと、カーン、カーンとまるで拍子木を叩くような澄んだ音が響きます。

 

よく枯れた上等の本枯節になると、その重さが生のカツオの五分の一になるのです。

 

煮たり、干したり、いぶしたり、カピ付けしたりして、水分を徹底的に排除し、木片のように固くなり、うま味が濃縮されて、味わい芳醇なカツオ節になるのです。

 

うま味のもとはイノシン酸を主とした30種類にも及ぶアミノ酸などで、欧米諸国の油脂系の濃厚な味に対して、さっぱりした天然発酵の味なのです。

 

この味が昆布ととともに、海外ではカレーにもラーメン、うどん、おでんにも使われ「和の昧」の人気を高めている。

 

和食に登場する料理には独特ののうま味成分が含まれていて、それが「ダシ」の味です。

 

和食の4大ダシというと、鰹節に昆布、煮干し、干し椎茸ですが、それぞれの独特のうま味を出してい9ます。

 

日本人が古くから大切にしてきた「うま味」は他の味を引き立てると同時に、料理全体の味わいを高める役目を果たしています。

 

四大ダシの主要なうま味成分は、次のようなものである。
カツオ節…………イノシン酸
昆布………………グルタミン酸
煮干し……………イノシン酸
干しシイタケ……グアニル酸

 

これらの中で、私たちが日常的に使用し、量も多いのがカツオ節です。カツオ節の77%強はたんぱく質です。

 

しかも、カツオ節に仕上げる過程で行われるカビ付けという発酵作用によって、アミノ酸に分解されていくのです。

 

そのアミノ酸はうま味のもとになるだけではなく、頭脳力の向上にも役止つイノシン酸やグルタミッ酸、タウリンなどで、記憶力や独創力などを高める成分でもあるのです。

 

人体が毎日コンスタントに必要とする必須アミノ酸が、すべてバランスよく含まれている点も強調しておきます。

 

ビタミンB1やB2,B12、D、E、それにカルシウムや鉄、亜鉛、マグネシウムなども豊富に含まれているのです。

 

物忘れや記憶力の衰えを救うDHA(ドコサヘキサエン酸)や、血液サラサラで注目のEPA(エイコサペンタエン酸)も合まれていて、まるで味出し成分と栄養成分のかたまりなのです。

 

これほど卓越したカツオ節を、毎日味噌汁に使って汁のうま味をいっそう引き立てます。

 

味噌のうま味成分はグルタミン酸だが、カツオ節のイノシン酸と混合して用いると、味噌汁全体の総合味が何倍にもふくらみうま味が強くなります。

 

総合アミノ酸スープと化した味噌汁は、単に口本人の舌や心を豊かにしただけではありません。

 

日本民族の独創性と長寿力を高める上でも、大きな役割を果たしてきたのです。


祝い事。昆布と鰹節

 

昆布が本州で流通するようになってからご昆布は祝い事にも不可欠な存在となりました。

 

武家が台頭した鎌倉時代には、武将の出陣や凱旋の祝い膳には「敵打ち勝ちで曹ぶ」の縁起をかついで、昆布・打ち鮑(熨斗鮑ともいい、鮑の肉を薄く長く干瓢のように剥いで乾燥させたもの)・勝栗(十分乾燥させた栗の鬼皮と渋皮を取ったもの)を肴に盃を交す慣習が定着し、祝儀物としでの地位を確立しました。

 

このように祝儀物として用いる習慣は、今日まで継承されています。

 

たとえば、鰹節は三枚におろした鰹の片身を二分して製され、背肉で作られたものは「雄節」、腹部の身で作ったものは「雌節」といい、二本がぴったり合わさって一本になることから、夫婦円満の象徴とされ、昆布は子孫繁栄を願って「子生婦」と記し、結納品をはじめ、結婚などの役儀物とされました。

 

ともに保存品であることから「末永い幸せ」を願う品として、慶事には欠かせないものとなったのです。

 

また、慶事には昆布を粉末にし昆布茶を飲む習慣も生まれ、さらに大相撲の土俵の中央には「土俵祭」の際に、力士の怪我や事故が起きないことを願って、勝栗・昆布・米・するめ・塩・茅の実などが鎮物として納められます。


 

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