昆布出汁はなぜ美味しい

昆布出汁はなぜ美味しい

 

和食がユネスコ世界無形文化遺産に登録されたのと相前後して、フランスでも昆布の旨味に注目が集まり、ミシュランに掲載されたレストランには、昆布出汁が常備されているとさえいわれています。

 

さて、昆布が本州に広く流通しだのは、蝦夷地との海路が聞かれた14世紀に入ってからのことです。

 

同時に、「昆布」の語も知られるようになり、15〜16世紀頃にはかなり広範囲に流布していたようです。

 

日本海を通る北前船の西廻り航路が開発され、小浜や敦賀の港は中継地として繁栄しました。

 

その後、関門海峡、瀬戸内海を経て大坂に至る経路が開かれて、大型船の往来も可能となり、天下の台所として名高かった大坂に昆布がもたらされました。

 

その後、上方で広く流通し、昆布食文化は大いに発展を見るのでした。

 

しかしながら、昆布の伝播が遅延した関東では、昆布食文化があまり発展しませんでした。

 

それは関東の水質が関西よりも硬度か高く、昆布の旨味を引き出すことができなかったからではないかと考えられています。

 

昆布から出汁をひくようになったのは、その存在が広く知れ渡った17世紀半ばのことで、はじめは「精進料理の出汁」として用いられていました。

 

今日、昆布の出汁をひくときは、水出しと湯出しがあり、前者は10時間ほど水に浸しておく方法で、上品な味の出汁をひくことができるといわれています。

 

後者は加熱するもので、昆布を入れた水を中火で煮立たせ、沸騰寸前に昆布を取り出す方法です。

 

しかし、江戸時代には長時間加熱して出汁をひいたらしく、昆布特有のねばり成分が溶け出し、かなりとろみのあるものと想像されます。

 

今日では、風味が損なわれるため、この方法は行われていません。

 

出汁用としては真昆布・羅臼昆布・利尻昆布・日高昆布が適し、硬度50度以下の水が素材の旨さを引き出すのに最適であるといわれています。

 

昆布だけで作った出汁は、鍋料理・湯豆腐・茶碗蒸し・和え物・酢の物などに適しています。

 

さて、昆布のおいしさが科学的に証明されたのは20世紀初頭のことです。

 

人間の味覚の基本とされた「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」の四種に加えて、1980年代、第五の味覚として「旨味」が世界的に認知されるようになったのです。

 

「旨味」は、明治41年、東京帝国大学の池田菊菌博士(1864〜1936年)によって見いだされ、命名されました。

 

そのきっかけは、昆布出汁で調理された湯豆腐がとてもおいしく感じられたことからの発見だったといわれています。

 

 

昆布表面に白い粉が付着していますが、この自い粉こそが旨味成分であるグルタミン酸マンニトールなのです。

 

したがって、調理前に昆布を水洗いすると、せっかくの旨味を失うことになりますので、ぬれ布巾で汚れやゴミを落とす程度、軽く拭くくらいにとどめておかなければなりません。

 

このグルタミン酸は昆布のほかには、和食の代表的な調味料である醤油や味噌にも含まれていますが、いずれも発酵食品です。

 

欧米ではチーズやトマト、アンチョビ、タマネギに含まれ、チーズは熟成中に、トマトも赤く熟すとグルタミン酸が増加しておいしくなるのです。

 

グルタミン酸ナトリウムの発見から1年後には商品化され、「食料界の大革新・理想的調味料」と銘打って、旨味調味料の代名詞「味の素」が発売されました。

昆布を味わう

 

昆布は出汁ばかりでなく、塩昆布や昆布巻などの調味食品があります。

 

塩昆布は小さな角切りや千切りにした昆布を醤油や砂糖を用いて煮詰め、表面に塩を吹き出させたもので、戦国武将の兵糧として必需品となっていました。

 

江戸時代以降は、保存食としで各家庭でも作られるようになり、出汁昆布の再利用として山椒や蕗など季節の素材を炊き合わせるなど、さまざまに展開しました。

 

塩昆布は昆布の一大集積地である大坂で発展し、すでに、江戸時代には大坂名物になりました。

 

昆布巻は正月のお節料理には欠かせない存在で、醤油や味淋などで時間をかけて煮るため、煮上がりが早く、柔らかい日高昆布や長昆布、厚葉昆布が適しているといわれます。

 

とくに、鰊を芯にして干瓢で結んだものは「錬昆布巻」と呼ばれ、北海道で産出する昆布と、身欠き鰊(鰊の干物)のみごとなコラボレーションといえます。

 

江戸末期、関西では鰊の煮物や昆布巻が一般家庭で調理されるほどになっていましたが、『守貞漫稿』には

江戸では鯡は猫の食べるものといわれるほどで、あまり食べられなかった

と記されています。

 

昆布が広く流通した関西ならではの食文化といえるでしょう。

 

ちなみに、山形県では「鰊昆布巷」を「昆布巻き鰊」と呼んで、夏の郷土料理のひとつとなっています。

 

関西以外にも昆布を用いた郷土料理が、各地に存存します。

 

昆布の旨味と塩分を活用したものに昆布締めがありますが、もとは昆布の大量消費地である富山県の郷土料理でした。

 

今日では、和食の一般的な調理法となっています。

 

軽く塩をした魚肉に昆布を巻き付けたり、昆布のあいだに魚肉を扶んで重石をかけて旨味と塩味を移すもので、この調理法によって鮮魚の賞味期間を延長させることもできるのです。

 

さらに、高知県では皿鉢料理の一品に、丸く棒状にしたすし飯を砂糖と醤油で甘く煮た昆布で巻いた「昆布鮨」があります。

 

また、京都ではぽ甘酢生姜を中心に酢で締めヒラメを昆布で巻いた「求肥巻」(「龍皮巻」ともいいます)があり、お節料理には欠かせないものとなっています。

 

昆布を調理しないで加工したものに、おぼろ昆布ととろろ昆布があります。

 

おぽろ昆布は昆布を酢溶液に浸して刄らかくした後、衣面を手漉きで帯状に薄く削いだもので、「黒おぼろ」と「白おぼろ」の二種があります。

 

前者は酸味が強いのですが、酢が浸透していない内側の白い部分は昆布本来の甘味があり、「太白おばろ」と呼ばれています。

 

最も内側の芯の部分白板昆布(大阪ではバッテラ昆布と呼びます)と称し、鯖の押し寿司(友阪ではバッテラずし、京祁では鯖寿司といいます)には三杯酢(叶に醤油、砂糖または味琳を加えたもの)で煮たものをのせます。

 

おぼろ昆布の技術は、刃物の町である大阪の堺と、北前船の集積地である敦賀で発達し、敦賀産のものは「若狭昆布」ともいい、現在も全国85%の生産量を誇っています。

 

一方、とろろ昆布は何枚もの昆布を重ねて圧稲したあと、縦方向に機械で薄く削ったものです。「おぼろ昆布」と似た形状をしていますが、加工法はまったく異なります。

 

関西や九州では、うどんにトッピングしたり、富山県ではコンビニで「とろろ昆布おにぎり」が販売されるなど、食べ方に地域性がみられます。

その土地土地のグルタミン酸がある

 

日本料理の味は出汁(ダシ)が決め手である。

 

吸い物や煮物、鍋材理にしても、ダシの使い方ひとつで味はずいぶん変わってきます。
カツオ節と並ぶダシの代表が昆布。

 

うま味成分の中にはグルタミン酸のおだやかな風味が溶け込んでいて、材料の待ち味を引き立ててくれるのです。

 

動物性でも植物性でも、煮出し汁をとることを「引く」と言いますが、材料からうま味成分を引き出すという意味です。

 

すまし汁をひと口すすれば、その料理人の腕前の見当がつくと言われるほど重要なのが出汁(ダシ)。

 

確かに、日本料理は出汁によって支えられている利理で、その歴史は占く、奈良時代すでに「堅魚煎汁(かつおいろり)」という調味料が用いられていました。

 

煮て干したカツオの煮出し汁で、液体調味料である。

 

昆布やイワシなど小魚類の煮干し、干しキノコも古くから味出しとして用いられています。

 

これらダシの文化は和食独特のもので、肉料理や油脂料理のほとんどなかった日本の場合、どうしても植物系の食材が多く、調味料によって料理にうま味を加える必要があったのです。

 

歴史的に見た場合、日本人の普段の生活で一番よく食べべられていたのは、野菜の煮付けと貝だくさんの味噌汁です。

 

材料はほとんどが植物性で、カツオ節や煮干しなどでうま味と栄養を加わるようになったのです。

 

世界で認識されている味は、塩味、甘味、酸味、苦味の四つの基本味である。

 

ところが、最近、海外でも味の研究が進んで、「うま味」も人間の共通味であることが判明し、五番目の味となったのです。

 

ただ、外国にはうま味に合う言葉がないため、日本語の『UMAMI』(うま味)がそのまま使われているのです。

 

「うま味」が世界に認識されることによって、和食の国際的な関心がさらに高くなるでしょう。

 

日本人がふだん使用している出汁は次のように多彩だが、すべてにグルタミン酸が含まれています。

 

日本人はグルタミン酸系のうま味か大好きであり、和食を支える不動の味になっているのです。

 

昆布(グルタミン酸、マッニットなどが中心の味)。カツオ節(イノシン酸、グルタミン酸などが中心の味)。干しシイタケ(グアニル酸、グルタミン酸などか中心の味)。サバ節(イノシン酸やグルタミン酸などか中心の味)。煮干し(イノシン酸やグルタミン酸などか中心の味)。干し貝(グルタミン酸やコハク酸などか中心の味)。カンピョウ(グルタミン酸などか中心の味)。しょっつる(秋田地方で鍋物などに用いられる魚からとった調味液で、グルタミン駿などが中心の味)。

 

これらは、その土地によって出汁の材料は異なりますが、すべてにグルタミン酸が豊富で、みそ汁などを通して毎日のようにとってきた「うま味」なのです。

 

参考参照:
出汁昆布は北の幸


 

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