ヘルシーな和食

和食の基本スタイル

 

和食の基本スタイルは「一汁一菜」または「一汁三菜」です。

 

「一汁一菜」と言うときは、「菜」は野菜のことではなく、惣菜のことです。

 

これにご飯と香の物(漬物)が加わりますが、このふたつは必須アイテムなので、あえて数には入れないので、「一汁一菜」という表現になるのです。

 

ほかに、「一汁三菜」という表現もあります。
「一汁」は一種類の汁物という意味。
「三菜」は三種類のおかずで、主菜がひとつと副菜がふたつ。

 

このように、われわれは和食を食べていながら、その起源をはじめ、さまざまな和食の料理、はたまた懐石料理と会席料理の違いや食材が限定されている精進料理、そして和食のマナーのことなど、知らないことが多すぎるようです。

 

和食が世界文化遺産に登録されたいま、あらためて和食とは何かを振り返ってみたいと思います。

和食はヘルシー!

 

1977年、アメリカでは連邦政府が脂肪分やコレステロールの摂取を削減し、タンパク質や炭水化物を多く摂取するようにとの指針を示した食生活改善指導「マクガバンレポート」を発表し、食生活の改善を呼びかけました。

 

実は、これより10年ほど前からアメリカでは、高所得者を中心とする健康志向が広まり、ヘルシーな食生活への関心が高まっていました。

 

そこで注目されたのが低脂肪の「和食」で、現地ではジャパニーズーレストランと命名された料理店が出現し、伝統的な和食のほか、カレーライスやラーメン、カツ丼、鉄板焼きなど日本で食べられているものなら何でも提供されたのです。

 

さて、和食は本当にヘルシーな食事なのでしょうか。

 

和食の歴史を紐解いてみますと、6世紀半ばに仏教が伝来して以来、明治の文明開化にいたるまで、牛や豚などの獣肉を□にすることは禁忌とされていたために、長い年月、日本人の食生活から、それらは姿を消していました。

 

そのため乳製品はもちろんのこと、ラードなどの動物性油脂も用いず、少量の植物油や胡麻油を使って、和食は展開したのです。

 

和食の食材となり得たものは、米をはじめとして穀類・豆類・野菜類・魚貝頌・海藻類・鳥類・米物類で、これらはいずれも低脂肪なものばかりですから、当然のことながら和食はヘルシーなものであったといえます。

 

しかし、このようなヘルシーな食事でありながら、すでに平安時代の人々も生活習慣病を患っていた、というのですから驚きです。

 

たとえば、権力をほしいままにした藤原道真は狭心症や糖尿病に悩まされていたようで、1メートルほど離れると人の顔の分別もできないぐらい視力が衰えていたと伝えられています。

 

さらに、『病草紙』(12世紀末期から13世紀初頭に成立)に登場する高利貸しの女は金にあかせての美食が過ぎたようで、両脇を支えてもらわなければ、一人で歩行することもままならないほど肥満していたといわれています。

 

また、『古今著聞集』に記された大食漢の男性貴族は、ダイエットのために医師から

 

「ご飯の量を減らしなさい。夏は水飯(水をかけたごはん)、冬は湯漬(お湯をかけたごはん)がよいでしょう」

 

と忠告されていたにも関わらず、おかずの押鮎(塩漬け後、おもしで押した鮎)を50〜60尾も平らげたというのですから、結果的には高カロリーな食事になってしまいました。

 

いつの峙代も、ダイエットは食欲との闘いなのかもしれません。

 

さて、和食の魅力のひとつは、現代人が求めるヘルシーな食事であるといえますが、よいことずくめではありません。

 

最大の欠点、全体的に高塩分であるということです。

 

それでも、あまり塩味を感じさせないのは、昆布や鰹の旨みを含んだ出汁(だし)や、醤油、味噌などの大豆発酵調味料、日本酒・味醂・コメ酢などの米発酵調味料をうまく使用しているからだといわれています。

 

このような低脂肪・高塩分の食文化は、韓国や東南アジ諸国の料理にも共通していますが、何よりも和食の特徴はニンニクなど風味の強い香辛料をほとんど用いず、素材ものものの味わいや良さを最大限に引き立たせる調理法が行われていることでしょう。

「五目=五色」の食材

 

和食には、五目めし、五目すし、五目豆など、「五目」ということぱがついた料理がたくさんあります。

 

五種類の食材を組み合わせて作った料理ということなのですが、食材は必ずしも五種類に限らず、季節の素材、さまざまな食材を用いて、栄養素、健康成分を満遍なく摂ろうという考え方が、和食の基本にあります。

 

 

そもそも、「五目」というのは、中国伝来の薬膳の発想で、五臓―心臓、肝臓、脾臓、肺臓、腎臓を健全に養うための五種類の食べものを意味しています。

 

五種の食べものは、「甘い、苦い、酸っぱい、辛い、しょっぱい」のいずれの味覚にも偏らないようにうまく組み合わせて料理します。

 

現代にもそのまま通用する「医食同源」の考え方なのです。

 

中国では、食による不老長寿が理想とされました。その理想に近いのが、和食だといえるでしょう。

 

「五目」の素材は、陰陽道の思想で分類すると、以下のようになります。

 

「五目」とは、陰陽道の「五色」ととらえればわかりやすいでしょう。

 

植物=野菜などの黒、赤、黄、緑といった、色が濃くて鮮やかなものには悩内や体内の酸化を防ぐ抗酸化物質が多く含まれています。
魚介類でも、赤いエビ、サケなどに抗酸化物質が多いという具合です。

 

・黒……脳の老化を防く、ドコサヘキサエン酸=DHAが多く含まれています。ウナギ、マグロ、カツオ、イワシなど。また、昆布、ワカメ、シジミ、黒豆なども脳の働きをよくする成分がたくさん含まれています。
・黄……頭の機能を向上ざせる成分が多い。大豆、さな粉、卵黄、柿、ウニなど。
・緑……病気を予防する成分、とくにビタミンが豊富。ほうれんそう、小松菜、菜の花、にら、葉ねぎ、わけぎ、だいこんの葉、枝豆など。
・赤……がんの予防に効果が期待されるカロテンが豊富。にんじん、トマト、りんご、イチゴ、とうがらし、すいか、ぶとうなど。魚でいえば、サヶの赤身の色素がアスタキサンチン老化を防く。
・白……タンパク質や薬成分が豊富なのです。大根、ねぎ、にんにく、たまねぎ、らっきよう、豆腐、イカ、白身魚など

 

以上の5項目で、季節のもの、旬のものを組み合わせることで、不老長寿を目指す健康生活の献立となります。

−汁三菜はバランスのとれた理想的な食事

 

和食の長所

 

「栄養バランスに優れた健康的な食生活」という点も、和食の大きな長所です。

 

昔の人たちは、栄養素など詳しいことは知らなくても、体験的に何をどう組み合わせて食べればよいかを知っていました。

 

和食の取り決めは、実はそうたくさんあるわけではありませんが、基本となる考え方はあります。そのひとつが、陰陽五行です、

 

陰陽五行とは、古代中国から伝わる思想で自然界のバランスを表すものです。

 

自然界のあらゆるものを「陰」と「陽」に分け、さらに自然界は「木」「火」「土」「金」「水」の5つの要素で成り立っていると考えます。

 

日本で古くから伝わる一汁三菜は、ごはんに味噌汁、主菜、副菜が2品です。

 

昔は肉食が禁止されていましたから、主役の動物性たんぱく質は魚であることが多く、これを「陽」とすると、脇役には、ビタミンやミネラルが豊富な野菜を「陰」としてつけます。

 

まさに理想的なバランスの食事なのです。

 

また「一汁」の味噌汁は、白いごはんには合わせますが、炊き込みごはんやお寿司のときはおすましを添えます。

 

塩をしていないフレッシュな魚は濃いたれに絡ませ、塩をした魚は薄いだしで調理するというのも同様です。

 

盛り方にも陰陽があり、四角い器に盛るときは丸く盛り、丸い器には四角に盛ります。

 

さらに五行の観点から「五味・五色・五法」を考慮し、五味(甘い・辛い・酸っぱい・塩辛い・苦い)、五色(赤・肯(緑)・黄・白・黒)、五法(焼く・煮る・揚げる・蒸す・生<切る>と、
同じものが重ならないようまんべんなく整えます。

 

西洋料理は脂肪を旨みとする脂肪文化ですが、和食はバランス重視なのです。

 

結果的にカロリーも低く、栄養面でも優れたヘルシーな食のスタイルとなっているのです。

 

家庭で献立を組み立てる際も、このように主役(陽)に脇役(陰)を足す、加減をしながらバランスをとる、と考えればまず間違いありません。

 

もちろん専門の料理屋も陰陽五行を大事にしますが、趣が少々異なります。

 

たとえば料理屋では秋になると松茸の土瓶蒸しを出します。

 

主役が松茸であるところに、主役級の鱧や海老も入れます。

 

これはお客様にもっと喜んでいただこうというプロの料理人だからこその取り合わせで、基本に沿って考えるならば、豆腐と三つ葉を添えるのが妥当なバランスといえるようです。

 

和食が難しいという声が多いのは家庭料理と料理のプロの常識が混同されていることがその一因です。

 

本来は家庭料理は分かり易く簡単なものです。

家庭料理は簡単でいい

 

歴史を振り返ると、日本人の食が大きく変わった転機は、物流の発達と冷蔵庫の普及にあります。

 

また、江戸に食糧が集まった元禄時代に武家の儀式用の本膳料理が確立し、さらに会席料理へと発展しました。

 

今日の料理専門の料理屋の料理はこの延長線上なのです。

 

宴席にふさわしい酒肴と、日々の食卓にのるおかずは、目的も作り方も違います。

 

 

たとえば、和食は「だしが命」といわれますが、家庭で作る具たくさんの味噌汁にだしはいりません。

 

きのこ、わかめ、油楊げ、野菜と、素材から旨みが出てきます。料理屋は旨みを煮出して居る時間がないからだしを取るのです。

 

調理法も昔とは変わりました。

 

かつて煮魚は、「煮汁が煮たったところに魚を入れる」「しょうがで臭みをとる」というのか常識でした。

 

砂糖を加えて甘みを補うことも必要でした。

 

しかしいまは朝、九州で穫れた魚が午後2時に東京に並ぶ時代です。

 

新鮮な魚なら、水に醤油を少し入れて一緒に火にかけ、沸騰したら火を止めるだけで十分に美味しくできます。

 

料理の常識や伝統は、時代とともに変わっていくものです。

 

「食のバランス」も「和食が簡単」ということも、実際に作ってみると、よくわかるでしょう。


 

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