むくみが生じるそのほかの内科的疾患

肝機能障害

むくみが生じるそのほかの内科的疾患があります。

 

肝機能障害

 

人の体は食べ物の栄養素を、そのままの形では利用できません。

 

栄養素を分解し、体が利用できる形に再編成して、初めてエネルギー源や身体をつくる素材として利用することができるのです。

 

この栄養素の再編成を主に行っているのが肝臓です(この働きを肝臓の代謝機能といいます)。

 

また、体内に入ってきた毒物や薬剤などは、肝臓で水に溶けやすい形に変えられ、尿や胆汁の中に排泄されます(この働きは肝臓の解毒機能といいます)。

 

肝臓は、このように多彩な働きをもっています。

 

一方この肝臓が働かなくなると、代謝が十分に行われなくなるため、体に必娶な物質が血液の中に供給されなくなります。

 

さらに機能が低下すれば(例えば肝硬変の状態)体に有毒な物質の排泄も十分に行われず、血液の中に有毒物がたまっていきます。

 

血液の成分バランスがくずれて血管から水分がにじみ出し、体内に水がたまりやすくなって、むくみや腹水(胃や腸などのすき間を満だしている淡黄色の透明な液。普通は30〜40mlですが、病気になると量が増え、数リットルになることもある)の増加が起こるのです。

 

肝機能障害による「むくみ」は押すとへこむのが特徴で、立っているときは脚、寝ているときは背中といったように、重力のかかる部分かむくみます。

 

肝臓の病気は命にかかわる可能性もあります。脚がむくみ、おなかがふくれて、しかもだるさがある場合は、すぐに病院へ行き、適切な検査と治療を受けてください。

 

病状は一人一人異なり、治療内容も違ってきますので、担当の医師の指示に従いましょう。

 

予防法はアルコール性肝障害ではお酒を飲みすぎないことです。

 

腎機能障害

 

腎臓は、心臓から送られてきた血液をろ過して不必要な成分を尿として排沁し、必要な成分を再吸収することによって、血液をきれいにしています。

 

腎臓の機能が低下すると、尿として排泄されるはずの余分な水分や塩分が体内にたまってしまうため、むくみが起こります。

 

まぶたのむくみから始まって、腎機能の低下が進むにつれ、手足がむくんできます。

 

靴がはけなくなるほどひどく足がむくむこともあります。

 

急性腎炎(細菌感染などによる腎臓の炎症)やネフローゼ(たんぱく質が尿中に出てしまう病気)といった腎臓の病気でも、脚のむくみが見られます。

 

腎臓に由来するむくみも、押すとへこむのが特徴です。

 

入院して検査を受け、食事療法と安静を中心とした治療を行ってください。

 

予防法を強いてあげるなら、水分や塩分をとりすぎないようにすること、疲れやストレスをためないように心がけることです。

心機能障害

 

心臓は、肺や全身の血管に血液を送り出すポンプの働きをしています。

 

心臓の働きが低下して、必要な量の血液を送り出せなくなった状態を心不全といいます。

 

立っているときにいちばん重力のかかる脚がむくんでしまうのは血液が静脈にたまりやすくなっているからです。

 

最初に足首のあたりがまるみを帯びてきて、むくみに気づくケースが多いようです。

 

また、夜、床について横になると、日中は脚の静脈にたまっていた多量の血液が、急に心臓に戻ります。

 

このため咳が出たり、息を吐くときゼーゼーヒューヒュー音が出たりします。

 

息苦しさを感じたときは、上半身を起こすと血液が再び脚のほうに流れていくのでラクになります。

 

心不全の原因となった病気によって治療法は異なりますが、心臓の筋肉収縮を強くする薬を内服するか、水分と塩分を控え、過度な運動は避ける、などの注意が原則的に必要です。

 

高血圧や心筋梗塞を原因とすることも多く、その場合は食事に気をつけ、内服治療を欠かさないことが予防法となります。

甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンを分泌する甲状腺の機能が低下する病気です。

 

甲状腺ホルモンの分泌が減ってくると、体内のいろいろな働きがうまく行われなくなってくるので、だるい、気力がわかない、動作がのろのろしてくるなどの症状が現れます。

 

頻度的には格段に女性に多い病気で、幅広い年齢で発病が見られますが30〜50代の人に最も多いようです。

 

脚はもちろんのこと、重力に閥係なくいろいろなところがむくんできます。

 

甲状腺機能低下症のむくみは、指で押しても凹まないのが特徴です。

 

発病には、遺伝的なものや自己免疫が関係していると考えられています。

 

免疫とはウィルスや細菌などの外敵をやっつけて、病気やケガから体を守ってくれているものです。

 

どういうわけか、この免疫システムが勘違いを起こして、外敵ではなく自分の体を構成しているタンパク質や細胞などを攻撃してしまうことかあります。

 

これが自己免疫関与の基本的なメカニズムです。

 

日常生活に支障をきたすようであれば、内服などでホルモンの働きを補うホルモン補充療法を行います。

 

予防法はとくにありません。

ビタミンB1欠乏症(脚気)

 

この病気はビタミンB1が不足すると起こってきます。

 

江戸時代、米を精白する技術が開発され、ビタミンB1を合む胚芽部分が除かれた白米を食べるようになってから発生し始めました。

 

脚とは膝から下のすねの部分のことですが、この部分がだるくなってむくむことから、脚気と呼ばれるようになったようです。

 

脚がむくんで、だるく重く疲れやすい、さらに膝頭をポンとたたいたとき膝から下が反射的に上がらない、などの症状があれば、脚気の疑いがあります。

 

食物の豊富な現代にはまれな病気といわれていますが、カロリーは十分なのに必要な栄養素が不足している「現代型栄養失調」の人もいますので、あなどれない病気です。

 

ビタミンB1の注射や内服で回復します。

 

予防法は偏食しないこと。

 

ちなみに、ビタミンB1を多く含む食品には、豚肉、胚芽米、きなこ、落花生、ゴマ、ウナギ、タラコなどがあります。

 

例えば女性に特有のむくみとして、妊娠浮腫、月経浮腫、更年期浮腫があります。

 

妊娠、月経、更年期などの時期に手足にむくみがくるものです。

 

また、長時間立っていたり、水分をとり過ぎたりしたときに起こる生理的なむくみもあります。

 

いずれも心配のないむくみで、足を高くして横になったり、前の晩に水分をとりすぎない、といったようなことで防ぐことができます。

特発性浮腫

 

明らかな原因が見つからずに、全身に浮腫を繰り返すのを、特発性浮腫と呼んでいます。

 

ほとんど女性に見られますが、思春期以降に発症し、閉経後も持続します。

 

教師、看護婦など長時間立って働く女性によく見られます。

 

朝夕の体重変化が大きいのも特徴で、ときに1.4s以上にもなることがあります。

 

症状は一般に軽く、とくに治療を必要としません。少量、間欠的に利尿剤を使用することもあります。

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